ふたば学舎の日常

このブログでは【NPO法人ふたば(ふたば学舎指定管理者)】からの情報をお伝えしています。

ちょっと一息、石田さんの音楽

今日もひたすら報告書。

休憩時に石田裕之さんの新譜『Hide - and - Seek』を聴く。

シンガーソングライターの石田さんにはふたば学舎の震災学習で協力していただいておりますが、石田さんは震災/防災だけでなく福祉や人権関連など多岐にわたる活動をされています。そうした活動の中心に音楽があると思うのですが、では、震災とかなんとかが係わらない石田さんの音楽は・・・ってことで『Hide - and - Seek』(全7曲)を聴くと・・・。

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ベテランンのジャズミュージシャンとの共演ということで音の・・・って、音楽に詳しくないので、素人の適当な印象論で言えば・・・2曲目の冒頭にポーン、ポーンっとハーモニクスがあって、1曲目と同じリフが奏でられるので、うわーカッコいいなぁと思ったのと同時に、そのハーモニクスが水面の波紋として視覚化されて、なるほど石田さんの諸々の活動のあり方は波紋のように人々を響かせる/人々に響いていく、というものなのかなと、そういうふうに音楽活動が一貫しているのかなと偉そうに考えたのでした。繰り返し聴いていると色々見えてきますから、「かくれんぼ」を意味するアルバムタイトルも言い得て妙という感じです。

休憩終了、報告書にもどる。

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ちなみに、石田さんの協力のもと制作したCD『被災の語り歌』(千円、売上は東日本大震災義援金として寄附)は、ふたば学舎「震災学習ラボ」にて販売しております。(山住)

報告書、理論、少しばかりベンヤミン

気づけば5月・・・。この時期は旧年度の報告書作成と新年度の計画の肉付け作業で机に張り付いていることが多くなります。

過去の実践の振り返りと新たな実践の計画をしていると、どのような枠組みで動いているのかなどを考え、いつものことながら実践と理論的なこととのバランスが気になります。(以下、ぐだぐだと・・・)

先日、町山智浩さんの『映画と本の以外な関係!』(インターナショナル新書)を読んでいたら、まえがきにヴァルター・ベンヤミンの絶筆とされる「歴史の概念について」(のパウル・クレーによる水彩画『新しい天使』に言及している箇所)が引用されていて、以前にベンヤミンを読んだ時(1995年の震災の後)とちがって腑に落ちる感じがしました。『映画と~』から孫引きすると、

「彼(=新しい天使)はその顔を過去に向けている。われわれには出来事の連鎖と見えるところに、彼はただ一つの破局(カタストロフィー)を見る。その破局は、次から次へと絶え間なく瓦礫を積み重ね、それらの瓦礫を彼の足元に投げる。彼はおそらくそこにしばしとどまり、死者を呼び覚まし、打ち砕かれたものをつなぎ合わせたいと思っているのだろう。」(ヴァルター・ベンヤミン著、山口裕之編訳「歴史の概念について」『ベンヤミン・アンソロジー』河出文庫

腑に落ちる感じがしたというのは、ナチス・ドイツからの亡命先で自殺したとされるユダヤ人のベンヤミンのことというより、震災学習で過去のカタストロフィーに関する記憶をいかに若い世代に継承するかということを日常的に考えていたからです。つまり、過去から現在・未来へ進行していく均質な歴史記述が拾い上げることのない打ち砕かれたものの記憶をつなぎ合わせることに、われわれが過去の(敗者の沈黙の)記憶を追体験する機会が含まれているのではないかと閃き、少なからず腑に落ちたわけです。

以前、読んだベンヤミンの翻訳は岩波文庫の野村修訳で、例えば、上記の「打ち砕かれたものをつなぎ合わせたいと思っているのだろう」の所は、「破壊されたものを寄せあつめて組みたてたいのだろう」と訳されています。主観ですが、組みたてるという垂直的イメージが、新訳でつなぎ合わせるという水平的イメージに変わり、歴史上の事がらの凸凹をならす(均す)動作が見えてきたのです(これは震災学習で使える!?)。翻訳なのでいかがなものかと思いますが、私には原文のドイツ語を読む能力がないので如何ともしがたいのですが、ベンヤミンの有名な翻訳論「翻訳者の課題」ではその課題は純粋言語への志向によって「原作のこだまが呼び起される」などとあり、また、ベンヤミン歴史観の背景にある神学なども考慮すると、深入りはせずに参考までにとどめようと思います。ちなみに、ハンナ・アレントの『暗い時代の人々』(ちくま学芸文庫)では次のような記述があります。「ベンヤミンについての理解を困難にしているものは、かれが詩人となることなしに、詩的に思考していたことであり、それゆえに隠喩を言語における最大の武器とみなさざるをえなかったことであった。」

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震災学習ラボの本棚にベンヤミンが図書館で調べものをしている写真を置いてみました。ここに来られたどなたかが気づかれるといいのですが・・・。(山住)

震災学習ラボ、開設

4月4日(火)から、ふたば学舎に「震災学習ラボ」が新たに開設されました。場所は1階の旧事務室です。事務室は斜め前の旧工作室に移転し、前より広くなりました。新年度になって、ふたば学舎の構成が変わり、貸室も増えました。

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ラボでは、基本的に震災学習担当の私(山住)が常駐しますが、震災関連資料収集・保存のほか、震災学習に関する企画、打合せなどを行っていく予定です。

平成29年度の震災学習は4月4日の県内学生12人を対象とした災害食・避難所体験から始まりました(「避難所もっとより良くプロジェクト」との共催)。↓神戸新聞に掲載された記事

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5月からは例年通り修学旅行生の受け入れがありますので、本格的に震災学習を実施していきます。震災を知らない子どもたちにとって有意義な学習内容になるようにしたいと思います。(山住 勝利)

「はるのじん」でウエルネスダーツ大会

本日、春休み子ども教室「はるのじん」の1プログラムとしてウエルネスダーツ大会を実施しました。ふたば学舎・人材育成事業「まち道部」の主催イベントです。今回の参加者数は9人。大人と子どもが混ざってチームを作りワイワイガヤガヤと楽しく競い合いました。

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まち道部でのウエルネスダーツは、部員の多田さんが中心となって取り組んでいます。ウエルネスダーツをふたば学舎近隣地域で広め、地域における健康増進、多世代交流・顔見知り社会の構築に寄与するのが目的です。がんばれ、多田さんっ!!

次回は、430日(日)13:3015:30。会場は、ふたば学舎1階 多目的室1-2、参加無料です。

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今後、毎月1回ウエルネスダーツ大会を実施していく予定ですので、ご都合よろしければ、ご参加ください。(やまずみ)

広島で沖縄戦と阪神・淡路大震災、二つの記憶継承について考える

3月25日(土)広島で行われた日本発達心理学会第28回大会で、過去の記憶の継承について話し合ってきました。f:id:npofutaba:20170326094633j:plain

「記憶の声を継承すること・現在を新たなものに変えること―沖縄と神戸の記憶をめぐる拡張的学習の社会的実践現場から―」と題するラウンドテーブルで、まず沖縄県宜野湾市にある佐喜眞美術館の上間かな恵さんが修学旅行生に対する沖縄戦の記憶継承について発表され、その後、私(やまずみ)がふたば学舎の震災学習における阪神・淡路大震災の記憶継承の取り組みについて発表。最後に全体討議を行いました。

戦争と震災の違いはありますが、過去の惨事をなぜ/いかに伝えようとしているか、ということについては共通点が多く見出せました。たとえば、学び手が過去の記憶を、パッケージ化されたものではなく、現在の自分に関わるものとして捉えるよう、容易に言葉で収まりきらない余剰を生むような学習内容になっているなど。その他、参加者の方々からの質疑で、ふたば学舎の今後の震災学習に活かせそうな考えを得ることができました。

それにしても、原爆ドームは戦争遺構として強烈です・・・。(やまずみ)

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明日3/25(土)、被災の語り歌コンサートツアー最終回

明日3/25(土)14:30~15:30、被災の語り歌コンサートツアー最終回を行います。場所は東灘区民センター多目的ホールです(JR「住吉駅」下車、南側へ徒歩約2分)。最終回は、司会なし、ゲストなし、マイクもアンプもなしで、シンガーソングライターの石田裕之さんに生声・生演奏で阪神淡路大震災の記憶を伝える「語り歌」を歌っていただきます。参加無料、先着50名(申込不要)です。

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ツアーは昨年9月に開始し、第5回となる今回が最終回です。

↓第3回(北神区民センター)の様子

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↓第4回(こうべまちづくり会館)の様子

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今後は「被災の語り歌」とは違う形で「語り」を探り、震災の記憶継承につなげていくことを考えています。

「被災の語り歌CD」は、ふたば学舎で継続して販売しておりますので、ご興味をお持ちの方はお買い求めください。定価1,000円、CDの売り上げは全て東日本大震災義援金として寄付いたします。(やまずみ)