ふたば学舎の日常

このブログでは【NPO法人ふたば(ふたば学舎指定管理者)】からの情報をお伝えしています。

「一人が好き」シリーズ第一弾

明日9/22(金)19:00~(20:00頃まで)音楽室2で「R&Rレコード、きいてく?」と題するレコード鑑賞会を行います。今回は1983年にリリースされたロックンロール・アルバムに限定しています。こちらで用意しているのは、ボブ・ディランの『インフィデル』とルー・リードの『レジェンダリー・ハーツ』の2枚です。1983年リリースのR&Rレコードでしたら、持ち込み可としています。行ってみようかなという方がいらっしゃったら、明日のことで恐縮ですが事前にふたば学舎(TEL:078-646-8128、E-mail:taiken@futabsyo.jp)までご連絡ください。(やまずみ)

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(以下、蛇足)

このレコード鑑賞会は、ふたば学舎・まち道部のマイナー企画「一人が好き」シリーズ第一弾として開催します。まち道部は、祭りを通した顔見知りの多い地域づくりを目指す、大人の部活動という位置づけですが、地域の中には「大人数より一人が好き」という人もいるだろう(?)と思います。「誰かとつき合わなければならないと想像するだけで嫌になる」と書くのはポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアですが、ペソアは多数の異名を使って書く、複数の創造された人物が内在する詩人でした。「斜めに進む微睡(まどろ)みによって、私は他者だった」(ペソア「不穏の書」澤田直訳)。そうしたペソア的傾向(!?)のある人が参加しないかなとLP『インフィデル』(信者/不信心者)と『レジェンダリー・ハーツ』(退廃/健全)を選んだわけだったりします。とはいえ鑑賞会当日は、両LPにまつわる細かな話はせずに(「一人が好き」シリーズですから)、ただ音を楽しむだけになります。今後、「一人が好き」シリーズの参加者が、結果的に「連帯というには憚れる連帯」を形成することになればいいなと考えています。鑑賞会の次はどんな催しがあるのか期待が膨らみますね(???)。

同日に震災学習と1泊避難所体験

9月12日に福島県立郡山高校187名対象の震災学習と龍谷大学政策学部2回生12名対象の1泊避難所体験を実施しました。

震災学習では生徒が半分に分かれて復興をテーマとしたディスカッションと新長田南地区のまち歩きを交互に行いました。ディスカッション内容は、阪神・淡路大震災から22.5年経った新長田南地区の様子をガイドの説明を聞きながら見て歩いた後(あるいは見る前に想像して)、龍谷大学の学生さんらを交えて討議するというものでした。テーマは復興でしたが、何をもって復興というのか定かでありませんので、新長田南地区に関する再開発事業の進捗状況や人口・世帯数および事業所数の推移など客観的なデータを提示してから、まず各自が考える「復興」を定義づけてもらいました。その後、まち歩きで見た(あるいは見る前に想像する)地域の姿と比較した上で(さらに福島で経験した東日本大震災についてこれまで思ってきたことを反映させて)、復興に関する考えを発表してもらいました。

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被災者個人の生活復興がなされても社会が復興していなければ・・・あるいは社会が復興していても・・・そもそもどういう状態が復興なのか・・・もしかしたら復興という言葉が消えた時に復興がなされるのかもしれず・・・。簡単にまとめられるテーマではありませんが、高校生のみなさんには将来自分たちが担うことになるかもしれないテーマとして、さらに考究してほしいと思いました。

ちなみに、阪神・淡路大震災に関するデータの提示については、(震災学習では新長田南地区の被災・復興に焦点を当てたため、ディスカッションで東日本大震災についてはほぼ言及しませんでしたが)開沼博著『はじめての福島学』を参考にしました。その他、今回、福島の原発事故にからむ被災については山下祐介ほか著『人間なき復興』や井上きみどり著『ふくしまノート』や端野洋子著『はじまりのはる』などを参照しました。自分自身がさらに考究しないとな、と痛感しております・・・。

それから郡山高校の震災学習終了後、龍谷大学学生12名対象の1泊避難所体験を続けて実施しました。段ボールで避難スペース作りをし、避難所で起こる問題を想像して考えてもらいましたが、さすが大学生、色々と意見が出ました。

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実際に段ボールの避難スペースで1泊したわけですが、やはりぐっすりと寝ることはできなかったようで、翌朝は一様にぐったりしていました。朝食としてポリ袋で炊いたご飯(災害食)は意外においしかったですが、もぐもぐもぐ・・・という感じでした。最後に、災害時の避難所の様子は、今も昔も(阪神・淡路大震災の時から変わらず)ストレスの溜まる悪環境ですから、その点を大学で防災/減災を学ぶ時に考慮してほしいと伝えました。ふたば学舎においても避難所の改善策を考えて、震災学習に反映させたいと思っています。(やまずみ)

「ハッケン教室~大学生と防災を学ぼう!~」で発見したこと

8/26(土)10:30~15:00に震災学習の夏休み企画「ハッケン教室~大学生と防災を学ぼう!~」を実施しました。

小学生5名と高校生1名が、ボランティアとして参加した神戸市外国語大学の学生7名といっしょに、避難スペース作り・災害食体験・災害時の知恵学習・まち歩きというメニューを通して防災を学びました。

外大生には、ハッケン教室の最初に、それぞれが大学で学んでいる外国語(英語、イスパニア語[スペイン語]、ロシア語)を使って自己紹介していただきました。みなさん非常に堪能で、いいアイスブレイクになりました。さすが外大生!それを聞いていて、神戸にいると災害時に被災した外国の人(海外にいる場合は自分が外国の人)とコミュニケーションをとらざるを得ないこともあるかもしれませんから、外国語の知識は重要だなと改めて思いました。

各メニューでは学生と子どものペアで活動してもらいました。経験したことのない震災について、学生さんが子どもをサポートする形で、互いにいろいろと想像力を働かせて考えてくれました。

避難スペース作りでは、避難所生活になると、赤ちゃんが泣きわめくことがあるだろう、わがままな人も出て来るだろう、風邪とか病気がひろがるだろう、などの意見が出ました。こうなるかもしれないという想像が出来ていれば、それだけ災害に対する備えが万全に近づくのだと思います。

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ポリ袋を使った災害食体験では、米を炊いて、カレーを作りました。炊飯は水の量と炊く時間の調整が難しく、おだんごっぽくなったりしましたが、ポリ袋で作ることができるということで、子どもたちには強く印象に残ったようです。

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災害時の知恵学習では、長田消防団第一分団の楯川さんにロープの結び方と救助法をご指導いただきました。担架を用いずに人を運ぶ方法については、参加者全員「へぇ~!」と驚嘆の声をあげていました。実際にやってみて、さらに納得です。

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最後は、神戸アーカイブ写真館の石井さん(元神戸市職員)のガイドでまち歩きを行いました。防災公園として整備されている水笠通公園まで行きましたが、学生さんからは「神戸に来てから公園がとても多いなと感じていた。阪神・淡路大震災の教訓を生かして防災のために設置されているのだと分かって」一番印象に残ったという感想をいただきました。

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今回、震災経験者が講師役となり、学生と子どもがペアで参加/体験するという形で震災学習を実施しました。学習形態については、体験メニューでは参加者が主体的に学ぶことになりますが、必ず含まれる講師から参加者という一方向の「教える」部分が、年齢差があっても若い(!)ペアで参加していることですぐに「学び合う」という活動に転換されていたようでした。こうした学習形態が過去の(体験者が減ってきた)震災の記憶と教訓の継承にすごくマッチしている、ということが私の「ハッケン」です。

今回参加のみなさんが防災についてたくさん「ハッケン」してくれていたらいいのですが。(やまずみ)

盛況だった夏祭り!

昨年に続き8月19日(土)にふたば学舎で行った夏祭りは540人の参加があり、盛況のうちに終えることができました。

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祭りを通して顔見知りの多い地域を作ることを活動目的とする「まち道部」による夏祭りでしたが、前回よりも参加者が多く、定着の兆しを感じました。定着すれば、それこそ毎回参加される方も増え、地域の面識化に貢献できる祭りになるのではないかと思います。スタッフとして活躍くださった、まち道部部員の皆様お疲れ様でした。

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工作教室では、1教室をいつものように「葉っぱ先生」にお世話になり、また、3教室を若手芸術家集団の芸法さんに実施していただきました。ありがとうございました。

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それから、今回も長蛇の列ができ好評だったお化け屋敷では、昨年同様「コスメル。」の5名の方々にお化け役でご協力いただきました。ありがとうございました。

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お化け屋敷の中で泣き出す子が多くいて変装効果バツグンでした。(やまずみ)

8/26(土)ハッケン教室~大学生と防災を学ぼう!~参加者募集中&余談

8月26日(土)10:30~15:00開催予定の「ハッケン教室~大学生と防災を学ぼう!~」は、日が近づいてきましたが、まだ参加者募集中です。対象は小学3年生~中学生、参加費無料です。大学生といっしょに避難所体験や災害食作り、防災に役立つ知恵学習、まち歩きを行います。学校の夏休みの自由研究に活用できると思います。申し込みをお待ちしています!(やまずみ)

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★以下、余談/雑文

夏なので、歩いていると葉の生い茂る木々や雑草群がよく目につきます。あれを見ると頭の中ですぐ、つげ義春さん(あるいは水木しげるさん)が描く木々に変換されてしまい、困ることはありませんが、何だか現実とイメージがくっついたり離れたりして見えてきます。

現実ではなくイメージに自分を合わせていく人々の傾向については過去にダニエル・ブーアスティンの『幻影の時代』なんかでも(たぶん)言及されていましたが、言語の使用においても現実との乖離は必然的にあるわけで、それは井上忠さんが言うところの言葉の「繭化作用」(だったと思う・・・)に起因するのでしょう。つまり、言葉で現実を捕えると、現実は言葉で覆われ、言葉を使う者は現実から保護されると。

ここから強引に話を震災学習にするなら、そこでは語り部体験談に顕著なように、言葉を中心的な媒体として用いているわけで、そうである限り震災は繭によって遮断されます。震災は現実的なことから隔たりますが、ただ、震災学習においては繭がある方がコミュニケーションはとりやすく、そして内容もわかりやすくなり、学習が円滑に進むでしょう。結局、言葉を使うほかないのですが、それなら言葉を現実に先行させずに(言葉の繭をほどいて)ダブらせたり交差させたりなんかすればいいのか、それはどうやってするのか・・・おぼろげな答えとして、言葉を発するという運動も含めて体を動かす、というのがふたば学舎で体験型の震災学習をやっていて思うところです(いつもながらの堂々巡りですが、果たしてこのブログを[しかも蛇足部分まで]いつも読んでいる人がいるのか???)。

本日、ウエルネ・スダーツ大会、そして8/19(土)夏祭り

本日、「まち道部」主催の第3回ウエルネ・スダーツ大会を行いました。16名の参加で、全員リピーターの方でした。

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このダーツ大会は、だれでも気軽に参加できて、一度経験すると、きっとやみつき!になります。やみつきになるのに健康にいい!ダーツ大会の次回は9/10(日)13:30~15:30です。参加申し込みお待ちしています。

そして、「まち道部」主催の次のお祭りは、8/19(土)開催の夏祭りです。楽しさいっぱいの夏祭りの詳細は以下のチラシをご覧ください。

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たくさんのご来場お待ちしております!(やまずみ)

県立大でふたば学舎の震災学習について講義

今日は兵庫県立大学神戸防災キャンパス(人と防災未来センター東館)で講義をさせていただきました。大学院減災復興政策研究科の阪本准教授がご担当の科目「災害の記憶と継承論」において、ふたば学舎の震災学習の取り組みを紹介するという内容です。以前、阪本准教授とふたば学舎で別件の打合せをしていて、ひょんな流れで今日講義ということになりました。

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ふたば学舎の震災学習は阪神・大震災の記憶継承に関わるものですが、その「記憶」にからむ難点を中心に話しました。たとえば、割り切りがちな「われわれ」の記憶=「阪神・淡路大震災」の記憶と表象不可能な言語の臨界点にまで至る「私」という個の記憶との齟齬をいかに同じ記憶継承の場に載せることができるかや、震災「学習」の中でいかに震災の「記憶」を位置づけるかなど(震災学習のコンセプトに係わることですが)、参考文献を使いながら説明しました。実際の震災学習は決められた時間枠でかっちりと行うようにしていますが、コンセプトの部分はけっこうグチグチ、だら~んとやっているなと自分で思います。

それはともかく、院生のみなさんは既に震災・防災に関連する活動をされていたり、阪神・淡路大震災で被災体験をされていたりするそうで、今後ふたば学舎の震災学習で協力してもらおうと考えています。阪本先生、大変有益な機会を与えてくださり、ありがとうございました。

今日の講義で参考にした主要文献は以下の通りです。講義内で言及したものもありますが、これら参考文献から今日どんな話をしたのか、あるいはふたば学舎の震災学習での私の思考癖みたいなものが見えてこないでしょうか??

井上忠『モイラ言語』、フーゴ・フォン・ホーフマンスタール「チャンドス卿の手紙」、サミュエル・ベケット『名づけえぬもの』、ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン論理哲学論考』、ナシーム・ニコラス・タレブ『反脆弱性』、ダンカン・ワッツ『偶然の科学』、丸山眞男「幕末における視座の変革」、高木光太郎『証言の心理学』、渡邉英徳『データを紡いで社会につなぐ』、額田勲『孤独死』、塩崎賢明『復興<災害>』、村上龍『半島を出よ』、木村玲欧『災害・防災の心理学』、水野リカ『学習効果の認知心理学』、ジェームズ・L・マッガウ『記憶と情動の脳科学』、テッサ・モーリス-スズキ『過去は死なない』、映画『ゆきゆきて、神軍

(やまずみ)