ふたば学舎の日常

このブログでは【NPO法人ふたば(ふたば学舎指定管理者)】からの情報をお伝えしています。

震災学習の実施(備忘録)

1月は3件の震災学習を担当しました。

(1)1月6日(土)から、ふたば学舎1階の震災学習オープンスペースで、パネル展示「和田幹さんの震災定点観測日記」を公開しています。

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定点観測写真を撮影されたワダカン(和田幹司)さんには2月4日(日)13:00-14:30に多目的室1-4で講演をしていただきます。

講演会「わだかんさんの震災定点観測」 | ふたば学舎

(2)1月13日(土)にイベント「遊んで学ぶ 子ども防災ワークショップ」を実施。参加者は28名。衣・食・住、それぞれで防災グッズ(ゴミ袋カッパ[衣]や牛乳パックスプーン[食]や段ボール防災スペース[住]など)を作りました。芸術家集団「芸法」による企画でしたが、段ボールを三角形に切り分け、それをレゴのように組み合わせて防災スペースのほか机などを作るというのは、楽しく遊べるアイデアでした。

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(3)23年前に阪神・淡路大震災のあった1月17日(水)には神戸市立西舞子小学校へ行き、学年ごとに分かれての震災語り部体験談を行いました。同校への出前震災学習は今回で4度目でした。どの学年の子どもたちも真剣に語り部さんの話を聴いていました。f:id:npofutaba:20180117105642j:plain

(やまずみ)

 

余談:大月敏雄著『町を住みこなす』(岩波新書)の中に「コミュニティ必要曲線」という図が載っています。それによれば、人がコミュニティ(その定義はともかく)を特に必要とするのは、自分が乳幼児である、親になって子育てをしている、高齢でご近所に見守られるようになる、そうした時期ということで、それ以外の1人で生きていけるような時期は必要度が低くなります。大震災が起きた時、コミュニティは重要だと言われるけれど、コミュニティを必要としないのであれば???

子ども防災ワークショップ

1月13日(土)13:30〜16:00に3階・講堂で小学生以上の子どもを対象にした震災学習イベント「子ども防災ワークショップ」を行います。防災グッズを作ったり、ゲームをしたり、体を動かして楽しみながら防災について学んでもらうワークショップです。参加無料、申し込み不要です。詳細は以下チラシをご覧ください。

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今回のイベントの中身は若手芸術集団のNPO法人芸法(げいほう)さんに依頼しました。震災学習事業担当者として、外部の芸術家の人がどのように防災に関するイベントを展開するか楽しみにしています。また、これまでの当館の震災学習では見られなかったおもしろいやり方があれば、今後の震災学習で取り入れたいなとも思っています。どうなるでしょうか。

 

以下余談。今日、出勤前にクライストの短篇「チリの地震」を再読(前に読んだのは10年以上前?)したのですが、ずっと登場人物の言葉がすれ違うのに怖くなりました。1647年にチリで(実際に)起こった地震の前後が舞台で、災害ユートピア的な場面もありますが、訳者の種村季弘さんの言葉を借りれば、登場人物たちは、「彼らの間には接触不能の透明な薄膜が張られでもしたように言葉が通わず、ために人間関係がたえず猜疑と不信の非伝導物質にさえぎられて悲劇の淵に引き込まれてゆく」のです。文学が震災の記憶に寄与する、ひとつのあり方だな、と偉そうに思った次第です。今年最後の余談でした。(やまずみ)

11月に実施したイベント振り返り

あっというまに12月(おお、パンタレイ・・・by頭脳警察)。11月はブログを一つもあげていませんから、備忘録的に先月実施担当したイベントについて記しておきます。

まず、11月5日(日)に毎年恒例の、二葉地区防災福祉コミュニティ、二葉ふれあいまちづくり協議会と連携した二葉ふれまち防災訓練を実施しました。ふたば学舎近隣にお住いの方々が多数参加し、煙体験や消火器訓練などを行いました。防災に関するコミュニティ維持にはとても大切なイベントです。

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19日(日)には震災関連映画として遠藤ミチロウ監督『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』上映会を行い、17名の参加がありました。ミュージシャン・遠藤ミチロウが震災を機に故郷・福島に向き合うドキュメンタリーですが、個人の震災の捉え方には人それぞれ差(色んな違い)があることを知るのによい映画だったと思います。東日本大震災にせよ阪神・淡路大震災にせよ震災の経験は一様ではない・・・。

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21日(火)には倉敷市立庄中学校2年生156名を対象に震災体験学習を実施しました。2時間ほどの避難所体験を中心にしたプログラムでしたが、生徒のみなさんはグループになってあらかじめ(父親やおばあさんや小さな子どもなど)役割を決めた上で、てきぱきと避難スペースを作り、避難所で起こり得る問題を発表してくれました。避難に対する感じ方は一様ではない・・・。実施側としては、短時間でいかに効果的に避難所疑似体験ができるかという課題が残りました。

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そして26日(日)は今回で8回目となる「まちの文化祭」を開催。ふたばスタッフ総出で取り組みましたが、舞台・展示・屋台で参加された皆様のおかげもあり、結果、昨年を上回る4,200人の来場者で盛り上がりました。

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ここまでくると、まちに定着した秋の祭りと言っていいのではないかと思います。ご来場の皆様、開催にご協力いただいた皆様、ありがとうございました。(やまずみ)

 

ここ数日の震災学習

10月18日(水)に三重大学教育学部附属中学校2年生141名を対象にした震災体験学習を当館3階の講堂で行いました。南海トラフ巨大地震が起こった場合、中学校が避難所になる可能性があるということから、避難所体験と炊き出し体験、ロープの結び方など災害時に役立つ知恵学習といったメニューを実施しました。

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また、夜間には宿泊先ホテルの宴会場で阪神・淡路大震災語り部体験談ということで、震災時の避難所運営に18歳で携わった経験をお持ちの中村さんにお話しいただきました。昼間の震災体験学習でもそうでしたが、生徒全員のメモをとる速さと質問力が高くて驚きました。質問は?と訊くとすぐに複数の生徒さんが挙手するといった感じで、震災学習で体験したこと(もしくは聞いた話し)の全体の文脈を理解しないと適した質問ができませんから、当日学んだことを未来の防災にきっと役立ててくれるだろうと思いました。

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10月21日(土)には、神戸学院大学現代社会学部で「防災実習Ⅱ」を履修されている学生13名を対象に避難所体験と災害食体験、まち歩き体験を行いました。すでに人と防災未来センターで学んでいたり、震災関連論文の読み込みなどをしている学生さんたちで、今回は当館の体験型震災学習を受けた後、大学で改めて「体験型学習」について考察するということでした。当日雨の中、神戸アーカイブ写真館の石井さんがガイドで傘をさしてまち歩きをしましたが、新長田駅北側の区画整理が行われた区域から南側の再開発事業の区域、さらに南側の駒ヶ林地区へと行くルートで、学生さんにはそれら区域の違いが特に印象に残ったようでした。(やまずみ)

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オール・シングス・マスト・パス

気がつけば10月。震災学習3件と人材育成事業・まち道部イベント1件を行い、バタバタとしておりました。

9月27日に福岡県明光学園中学校3年生の女子31名を対象に震災体験学習を実施。昨年に続き2度目で、今回はポリ袋で災害食、避難所体験、語り部体験談という内容でした。避難所生活で困ることは何かと尋ねると、着替えやお風呂に入れないことや赤ちゃんの泣き声など、女性の視点からの意見が多く挙がりました。

↓膝の上で紙食器作り

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9月29日から30日にかけては災害復興学会の会員4名を対象に1泊避難所体験を実施。震災について詳しい方ばかりでしたが、特に関心を持たれたのは、いつも語り部として震災学習にご協力いただいている中村さんが話す避難所運営体験談でした。中村さん、ありがとうございました。

語り部体験談

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10月1日は、まち道部の部員が中心になって行っているウエルネス・ダーツ(健康ダーツ)の練習会を当館近所の駒ヶ林会館で実施。参加者はもくもくと矢を投げ、後半に4チームに分かれて練習試合を行いました。今後、小地域ごとにウエルネス・ダーツを紹介し広めていく布石として、この会館で実施しました。実は、顔見知り社会の構築を目指すまち道部の活動を地域の防災の取り組みにつなげていくことも考えています。

駒ヶ林会館でウエルネス・ダーツ

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10月3日には高知県立高知南中学校2年生119名を対象にした震災体験学習を行いました。今回で3回目になります。高知南中学校は南海トラフ地震など災害時に津波避難ビルとなるということもあり、そうしたことも考慮に入れて避難所体験を行ってもらいました。また、その後のメニュー「災害現場の知恵学習」では神戸市長田消防署の松田救急係長と長田消防団の為岡さんにロープの結び方と救急搬送の仕方をご指導いただきました。ありがとうございました。

↓カーテンを使って先生を救急搬送

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余談:バタバタとしている間の休みの日にタワーレコードの栄枯盛衰を巡るドキュメンタリー『ALL THINGS MUST PASS』を観て、継続している事業の所々でリフレクションを入れないとよろしくないなと思った次第であります・・・。(やまずみ)

「一人が好き」シリーズ第一弾

明日9/22(金)19:00~(20:00頃まで)音楽室2で「R&Rレコード、きいてく?」と題するレコード鑑賞会を行います。今回は1983年にリリースされたロックンロール・アルバムに限定しています。こちらで用意しているのは、ボブ・ディランの『インフィデル』とルー・リードの『レジェンダリー・ハーツ』の2枚です。1983年リリースのR&Rレコードでしたら、持ち込み可としています。行ってみようかなという方がいらっしゃったら、明日のことで恐縮ですが事前にふたば学舎(TEL:078-646-8128、E-mail:taiken@futabsyo.jp)までご連絡ください。(やまずみ)

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(以下、蛇足)

このレコード鑑賞会は、ふたば学舎・まち道部のマイナー企画「一人が好き」シリーズ第一弾として開催します。まち道部は、祭りを通した顔見知りの多い地域づくりを目指す、大人の部活動という位置づけですが、地域の中には「大人数より一人が好き」という人もいるだろう(?)と思います。「誰かとつき合わなければならないと想像するだけで嫌になる」と書くのはポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアですが、ペソアは多数の異名を使って書く、複数の創造された人物が内在する詩人でした。「斜めに進む微睡(まどろ)みによって、私は他者だった」(ペソア「不穏の書」澤田直訳)。そうしたペソア的傾向(!?)のある人が参加しないかなとLP『インフィデル』(信者/不信心者)と『レジェンダリー・ハーツ』(退廃/健全)を選んだわけだったりします。とはいえ鑑賞会当日は、両LPにまつわる細かな話はせずに(「一人が好き」シリーズですから)、ただ音を楽しむだけになります。今後、「一人が好き」シリーズの参加者が、結果的に「連帯というには憚れる連帯」を形成することになればいいなと考えています。鑑賞会の次はどんな催しがあるのか期待が膨らみますね(???)。

同日に震災学習と1泊避難所体験

9月12日に福島県立郡山高校187名対象の震災学習と龍谷大学政策学部2回生12名対象の1泊避難所体験を実施しました。

震災学習では生徒が半分に分かれて復興をテーマとしたディスカッションと新長田南地区のまち歩きを交互に行いました。ディスカッション内容は、阪神・淡路大震災から22.5年経った新長田南地区の様子をガイドの説明を聞きながら見て歩いた後(あるいは見る前に想像して)、龍谷大学の学生さんらを交えて討議するというものでした。テーマは復興でしたが、何をもって復興というのか定かでありませんので、新長田南地区に関する再開発事業の進捗状況や人口・世帯数および事業所数の推移など客観的なデータを提示してから、まず各自が考える「復興」を定義づけてもらいました。その後、まち歩きで見た(あるいは見る前に想像する)地域の姿と比較した上で(さらに福島で経験した東日本大震災についてこれまで思ってきたことを反映させて)、復興に関する考えを発表してもらいました。

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被災者個人の生活復興がなされても社会が復興していなければ・・・あるいは社会が復興していても・・・そもそもどういう状態が復興なのか・・・もしかしたら復興という言葉が消えた時に復興がなされるのかもしれず・・・。簡単にまとめられるテーマではありませんが、高校生のみなさんには将来自分たちが担うことになるかもしれないテーマとして、さらに考究してほしいと思いました。

ちなみに、阪神・淡路大震災に関するデータの提示については、(震災学習では新長田南地区の被災・復興に焦点を当てたため、ディスカッションで東日本大震災についてはほぼ言及しませんでしたが)開沼博著『はじめての福島学』を参考にしました。その他、今回、福島の原発事故にからむ被災については山下祐介ほか著『人間なき復興』や井上きみどり著『ふくしまノート』や端野洋子著『はじまりのはる』などを参照しました。自分自身がさらに考究しないとな、と痛感しております・・・。

それから郡山高校の震災学習終了後、龍谷大学学生12名対象の1泊避難所体験を続けて実施しました。段ボールで避難スペース作りをし、避難所で起こる問題を想像して考えてもらいましたが、さすが大学生、色々と意見が出ました。

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実際に段ボールの避難スペースで1泊したわけですが、やはりぐっすりと寝ることはできなかったようで、翌朝は一様にぐったりしていました。朝食としてポリ袋で炊いたご飯(災害食)は意外においしかったですが、もぐもぐもぐ・・・という感じでした。最後に、災害時の避難所の様子は、今も昔も(阪神・淡路大震災の時から変わらず)ストレスの溜まる悪環境ですから、その点を大学で防災/減災を学ぶ時に考慮してほしいと伝えました。ふたば学舎においても避難所の改善策を考えて、震災学習に反映させたいと思っています。(やまずみ)