ふたば学舎の日常

このブログでは【NPO法人ふたば(ふたば学舎指定管理者)】からの情報をお伝えしています。

震災学習での避難所体験と実際の避難所開設

9月は震災学習を3件行いました。

対象はいずれも市外の中学校で、19日(水)が岐阜県各務原市立川島中学校3年生107名、20日(木)が各務原市中央中学校3年生257名、27日(木)が福岡県明光学園中学校3年生52名でした。

f:id:npofutaba:20180919124121j:plain

時間の長さと内容は異なりましたが、3件とも段ボールを使った避難スペース作りに挑戦してもらいました。家族に見立てたグループに分かれ、避難生活ができるスペースを作った後、阪神・淡路大震災のような巨大災害で避難生活が続くとどんな問題が起こるだろうか考え答えてもらいました。積極的に挙手して答えてくれたり、思いついたけど答えるのをためらったり色々ありましたが、なぜか避難生活の中で最初に起こり得る、トイレが水洗できず詰まって使えなくなるという問題を挙げる生徒はいませんでした(避難生活での問題をあくまで自分たちが作った避難空間の中で起こる問題と捉えてしまうからか?とはいえ、震災学習の実施側としては、生徒のみなさんに避難生活における身体的な不快さについて想像してもらうのは意外と難しいと感じています)。

そして30日(日)は、台風24号が神戸に接近し、台風21号に引き続きふたば学舎は緊急避難所となりました。台風21号の時は近隣住民40名が避難されましたが、今回は16名でした。高齢の方がほとんどで、多くの方が早めに当館に自主避難で来られていました。22時30分頃に避難勧告が解除され、みなさん無事に帰宅されました。緊急避難ですから、台風が通過するまでの短期間(6~10時間)ですが、もし大規模災害で長期の避難生活になると体調を崩してしまう人が出るのではないかと不安になります。

余談:床に雑魚寝型の避難所の様子というのは(段ボールベッドの導入など改善策が練られ出しているとはいえ)阪神・淡路大震災の時から今までほとんど変わりませんが、「日本の避難所のレベルの低さ」についてはアルピニスト野口健さん著『震災が起きた後で死なないために』(PHP新書)が参考になります。熊本地震の際に野口さんが避難所で取り組まれたテント村のことや人道援助の最低基準である「スフィア基準」のことなどが紹介されています。(やまずみ)

f:id:npofutaba:20181002112616j:plain

震災学習と夏祭りの実施

8月22日(水)に島根県の松江総合医療専門学校看護学科63名を対象とした2時間の震災学習を行いました。

f:id:npofutaba:20180822162953j:plain

スライド学習、避難所体験、紙食器作り、災害現場の知恵学習という内容でした。あらかじめ学校で災害および災害看護について事前学習されていたこともあり、生徒のみなさんは自分事として震災に関する話を聞き、避難スペース作りなどの活動をされていました。山陰にはひずみ集中帯があり、地震が起こりやすくなっているという指摘もありますから(とはいえ日本ではいつどこで地震が起こるかわかりませんが)、今回の震災学習が未来の震災に備えるための学びになっていればと思います。

それから8月25日(土)に3回目となる夏祭りを実施しました。

f:id:npofutaba:20180825143950j:plain

講堂で工作ワークショップ、1階多目的室でお化け屋敷、夜に再び講堂で『東海道四谷怪談』の上映会という内容で、延べ254名の地域のみなさんにご参加いただきました。夏祭りを含めたふたば学舎主催のお祭りの大きな目的は「顔見知り社会」を作るということなのですが、「顔見知り社会」の形成が、ひいては災害時の共助につながるものと考えております。ちょっとでも知っていれば手を差し伸べる気持ちもわきやすくなるだろうと・・・つまり、防災活動の一環としてお祭りを行っているわけです。(やまずみ)

 

駒ケ林小学校で震災語り部体験談

本日、神戸市立駒ケ林小学校で毎年行われている鳥取県船岡小学校との5年生同士の交流学習「船岡フレンドシップ交流」で、地元の語り部さん6名による震災語り部体験談を実施しました(交流学習が始まったきっかけは戦時中の船岡への学童疎開阪神・淡路大震災時の船岡町からの支援ということです)。両学校の5年生85名が6グループに分かれて、それぞれ語り部さんの震災体験を聞きました。つい先日(6/18)に大阪北部地震が起こり長田区でも震度4の揺れがありましたので、語り部のみなさんもそれについて言及してから最大震度7阪神・淡路大震災に関する体験と教訓を子ども達に伝えられていました。

 f:id:npofutaba:20180628135614j:plainf:id:npofutaba:20180628135317j:plain

f:id:npofutaba:20180628140354j:plain

語り部体験談の後は、5年生全員がアリーナに集まって、3問ほど防災クイズにチャレンジしました。最後の発表タイムでは、船岡小の児童から「駒小の人と交流して震災のことが知れてよかったです」という感想がありました。地震はいつどこで起こるか/遭遇するかわかりませんから、今回の震災学習を通して災害時の望ましい行動の知識が少しでも身についていればいいなと思います。(やまずみ)

 

震災学習の実施、お礼の手紙

本日、岐阜県羽島市竹鼻中学校3年生192名対象に2時間の震災学習を実施しました。プログラム内容は阪神・淡路大震災に関するスライド学習と避難所体験、災害時の知恵学習でした。避難所体験では人数が多かったため、避難スペースに使う段ボールが足りないグループもありましたが、実際の避難所の窮屈さに近い感じになりました。そして、避難生活の中で起こり得る困ったことを考えて発表してもらい、避難所では多様な問題が生じることを認識してもらいました。その後、元神戸市消防署員の野村勝さんに、災害時の知恵学習として、ロープ結束(本結び)と救急搬送法をご教授いただきました。今回学んだことが生徒のみなさんの防災意識向上につながればと思います。

↓本結びを習得中。

f:id:npofutaba:20180601101653j:plain

それから、5月11日に震災学習を受けていただいた岡山市立妹尾中学校2年生98名のみなさんからお礼の手紙が届けられました。

f:id:npofutaba:20180601155651j:plain

それぞれの感想を知ることができて大変ありがたいです。今後の参考にさせていただき、震災学習の内容をよりよいものにしていきたいと思います。ありがとうございました。(山住)

5月の震災学習

5月は震災学習の受入が5件ありました。すべて県外の中学生が対象でした。

(1)10日、倉敷市琴浦中学校173名。ふたば学舎前で、全員で炊き出し(豚汁とおにぎり)調理体験。

f:id:npofutaba:20180510122015j:plain

(2)11日、岡山市立妹尾中学校98名。避難所体験、炊き出し体験、語り部体験談、まち歩き、災害現場の知恵学習、という内容でした。

f:id:npofutaba:20180511131831j:plain

(3)14日、高知県須崎市立朝ヶ丘中学校70名。炊き出し体験、まち歩き、避難所体験、災害現場の知恵学習、という内容。

f:id:npofutaba:20180514141235j:plain

(4)15日、高知県香南市立香我美中学校56名。炊き出し体験、避難所体験、語り部体験談、災害現場の知恵学習、という内容。

f:id:npofutaba:20180515150746j:plain

(5)17日、静岡市清水第八中学校108名。炊き出し体験の後、二手に分かれて、まち歩きと避難所体験を交互に行いました。

f:id:npofutaba:20180517143519j:plain

上記震災学習に参加した生徒のみなさんは総じて真剣に(また楽しみながら)震災学習メニューに取り組んでいました。今回の震災学習がみなさんの防災/減災意識向上の一助になればと思います。とはいえ、震災学習を通していかに震災を自分事としてとらえてもらうかについては課題が残った感じです。自分の脇をくすぐってもくすぐったくないように(脳がくすぐることを先読みするので)、あらかじめ予測できる内容に終始してしまっているのがよくないのか、実際の震災現場で生ずる予測不可能性をプログラムに組み込めばいいのか(どうやって??)、何かと改善すべき点も出てきました。いろいろ考えていきたいと思います。

中学生のみなさん、それから、震災学習の各メニューでご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

また、ふたば学舎の震災学習について、日本経済新聞(2018年4月21日、夕刊)と神戸新聞(2018年5月21日、朝刊)に紹介記事を掲載していただきました。ありがとうございました。f:id:npofutaba:20180522143455j:plain

f:id:npofutaba:20180522143437j:plain

(やまずみ)

「ロックの名曲だと思います」今回は日本のロック

4/22(日)13:00~14:30にロック音楽鑑賞会「ロックの名曲だと思います」をふたば学舎・音楽室2で開催します。前回は洋楽ロックでしたが、今回は1960年代~80年代の邦楽ロックの名曲を一緒に聴くゆる~いイベントです。気が向いたらご参加ください。持ち物は、これは日本のロックの名曲だ!と思う(主観)曲が入っているCD、もしくはポータブルオーディオプレーヤーです(ただし物によっては再生できない場合があります)。参加無料です。f:id:npofutaba:20180418163721p:plain

余談:音楽CDの生産量がこの20年で半減する一方(日本レコード協会「日本のレコード産業2017」参照)、無料動画配信サービスを介して音楽を聞く人が増えているようです。それでも、過去のアーティストの有名アルバムのリマスター版などのリリース情報につい目が行ってしまう身としては、レコード会社がこれまで蓄積してきた有名アーティストのバックカタログを使って売り上げを伸ばす戦略は(特に中高年向きには)有効だと思っていたのですが(キース・ニーガス『ポピュラー音楽理論入門』参照)、そんなにでもないかもしれません・・・無料で聞けたりしますから。とはいえまあ今回の「ロックの名曲だと思います」は物(CD)好きなイベントということで・・・。ちなみに60~80年代の邦楽ロックの名曲と言えば、主観ならやはり山口冨士夫の曲に尽きるでしょう。(やまずみ)

震災学習での語り方を遠回りに考える(雑文)

今年も5月から震災学習の受け入れが始まります。5月の対象は神戸市外の中学生ということもあり、若い人たちにどう話そうかと改めて考える参考に、河出書房新社「14歳の世渡り術シリーズ」の1冊、萱野稔人著『暴力はいけないことだと誰もがいうけれど』を読んでみました。

f:id:npofutaba:20180405160541j:plain

萱野さんの著作は『国家とはなにか』以来、注目してきたので、『暴力は・・・』でも述べられている、国家が合法的に暴力への権利を独占するという主旨は知っていました。では、『暴力は・・・』においてどのように記述の仕方/語り方が異なっているのかといえば、まさしく語るように書かれており、使用語彙が(たぶん)14歳に合わされ、読み易さを考慮してか改行が多用されています。特に印象に残ったのは話の根拠を、「何度もいうようですが」とか「先ほど指摘したように」とか「どういうことかというと」というふうに、丁寧に繰り返し行っていることでした。また、突き詰めて考えるとわかること(社会通念に流されない考え方)、たとえば、善悪の道徳的基準には限界があり、理論的思考の邪魔をするといったこと(たとえば、暴力は悪だと一義的に捉えると暴力を独占する国家について理解できなくなる)が書かれてあり、読みながら「なるほど」と納得させられました。ちなみに、道徳感情の根源にある処罰感情および応報感情については同じく萱野さんの『死刑、その哲学的考察』(ちくま新書)に詳しいです。

さて、『暴力は・・・』を参考にして、中学生がわかるように話すには、使用語彙の配慮、語りの間合い、繰り返しの理由づけ、そして社会通念を超える内容(つまり知っていたけれど考えていなかったこと)、といった所が重要かと思われます。とはいえ、私が14歳だった時のことを思い出して(ほとんど忘れましたが)、中学生が『暴力は・・・』を読んで、どこまでわかるものなのか・・・よくわかりません。

山鳥重著『「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学』(ちくま新書)によると、わかるためには、意識に現れる像が何であるか言語を介して判断する記憶心像(記憶のストック)が必要です。そして、科学的にせよ思弁的にせよ自分で分類・整理することによってわけがわかるようになります。であれば、話の内容を相手がわかるようにするには、相手の知っている単語を使って、筋道立てて(つまりあらかじめ整理して)、意味づけしなければいけません。しかしそれだと結局、相手は自分が知っていることに情報転換するだけですから、すべて既知のものに収まってしまうでしょう。既知のベールをはがすにはどうすればいいか?『「わかる」とは・・・』から引用すると、「学校ではわからないことは試験問題とか、先生からの質問という形で与えられます。ですが、このように受け身の形で人から与えられた問題(わからないこと)が解けたからといって、知識が自分のものになるわけではありません。本当の意味でのわかる・わからないの区別の能力は人から与えられるものではありません。自分から自発的にわからないことをはっきりさせ、それを自分で解決してゆかないかぎり、自分の能力にはならないのです」。おそらく、自分でわからないことを見つける自発性が既知のベールをはがし、創造的な「わかる」に導くのでしょう。わからないことを相手に発見させるのには、萱野さんの『暴力は・・・』にあるような、知っていたけれど考えていなかった話が刺激になるのではないかと思います。おわり。

いつもながら私以外だれか読むのでしょうか??(山住)