ふたば学舎の日常

このブログでは【NPO法人ふたば(ふたば学舎指定管理者)】からの情報をお伝えしています。

備忘録:防災/減災の学びと避難行動

10月は大学生を対象とした震災学習を1件実施しました。スライド学習と商店主の方の震災体験談を含むまち歩きを通して阪神・淡路大震災について学んでいただきました。それにしても大学で防災や減災を学ぶ学生さん、あるいは被災地でボランティア活動をする学生さんが年々増えていっているという印象です。

f:id:npofutaba:20181008110423j:plain

最近、近所の本屋さんに行くと『人はなぜ逃げおくれるのか―災害の心理学』(広瀬弘忠著、2004年)と『人が死なない防災』(片田敏孝著、2012年)が平積みされていて、7月から豪雨、台風、地震が続き、人々の災害に対する意識が高まっているのを狙ってのことだと思います。

14年前(!)に刊行された前者では、警報が発令された際、過度な恐怖や不安に陥らないようにリスクを過小評価する人々の心の機能である「正常性バイアス」が題名の「人はなぜ逃げおくれるのか」に対する答えとして提示されています。正常性バイアスにとらわれている限り人は逃げ遅れてしまうわけですが、では、どうすれば人は災害時に素早く逃げるのか?後者では、三重県尾鷲市で取り組んでいる「逃げるひと」をつくるプロジェクトが紹介されていて、そのプロジェクトでは、住民に東海・東南海・南海連動型地震で発生する津波が尾鷲にやって来るシミュレーション(「尾鷲市動く津波ハザードマップ」)を見せます。そして、津波の遡上に対して避難行動の開始時間が遅いか早いかによって犠牲者数が3,200人から0人に変わることを示します。そうすると住民の意識は「よし、地震が起こったらただちに逃げるぞ」となるのだそうです。

また、東日本大震災の前年に初版が刊行され、今年増補版が出た『津波災害―減災社会を築く』(河田惠昭著、2018年)では、高知県黒潮町における津波に対する住民意識の変化が紹介されています。その変化は町内に津波避難タワーが増えていくことがきっかけとなっており、タワーが増えていくことが「津波が確実に来る」「逃げなければ、命をなくす」という意識を起こしたようです。

f:id:npofutaba:20181031110109j:plain

実際の避難行動に結びつく他人事から自分事への意識の変化は、マップやタワーなど何らかの人工物が仲介する学びによって生じているのが興味深く、ふたば学舎の震災学習の参考になります。(やまずみ)