ふたば学舎の日常

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雑記:映画で都市と人の生活について考える

先日、元町映画館で『ジェイン・ジェイコブズ ―ニューヨーク都市計画革命―』を観ました。

主人公は著書『アメリカ大都市の死と生』で著名なジャーナリストのジェイン・ジェイコブズで、とりわけ1960・70年代のニューヨークでの強引な都市計画に対するジェイコブズを中心とした市民の反対運動が描かれます。敵対するのはパワーブローカーのロバート・モーゼスです。映画での対立の図式はわかりやすくて、合理的で予測可能な(ああすればこうなる式の)トップダウン型の都市設計のモーゼス vs 予測不可能で雑多な都市を擁護するジェイコブズ。前者の都市には生活する人々の動きは見られませんが、後者では様々な人々の喧騒がボトムアップに都市を形成していきます。ジェイコブズの都市観察は、2002年にクリエイティブ・クラスの台頭を論じたリチャード・フロリダによれば、異なる職業・年齢・エスニシティ・思想などが相互交流することによって生ずる創造性と多様性を賞揚するものです。それだからか、映画の中の二項対立については、一見するとジェイコブズの側につきたくなったのですが、地震の多い日本ではモーゼスとは別種の上意下達式都市設計が必要なのかもしれず、そのあたりの塩梅がよくわかりません(養老孟司さんと隈研吾さんの対談本『日本人はどう住まうべきか?』に建築学会では津波に関してまったく研究されてないだとか、建築の人も土木の人も液状化はノーマークだとか述べられていたことを思い出したもので)。それでも場の創造と人の活動、そしてそこから自然発生的に形成される乱雑な秩序について考えるのに良い映画でした。(やまずみ)