ふたば学舎の日常

このブログでは【NPO法人ふたば(ふたば学舎指定管理者)】からの情報をお伝えしています。

ふたばでハロウィン・イベント、そしてアートについて少し

10月31日にふたば学舎初のハロウィン・イベントを講堂で開催しました。秘密の言葉(会場に掲示)を言ってくれたらお菓子をプレゼントするという内容で、コスプレをした子どもたちとその親御さん約400名の参加がありました。開催前から長蛇の列ができ、用意していたお菓子は開始30分ほどで無くなってしまい、イベントはすぐに終了となりました。それでも飾り付けの前で写真撮影をする親子の姿が多く見られ、主催者側としてはありがたかったです。会場真ん中の空いたスペースには、ありあわせの材料でホントに簡単に作ったオバケのオブジェ(?)を置いたのですが、その前でも撮影している人がいて、うれしかったです。ありがとうございました。(やまずみ)

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余談:最近では、イベント会場をデジタル・テクノロジーを使ったインスタレーション作品として展示するなんてことがあったりしますが、今回ハロウィンのイベントを開催してみて、ふと、テクノロジー・アートを手掛けるチームラボやライゾマティクスといった有名どころの会社に依頼すればすごいクオリティになるんだろうなと妄想しました。いったいいくらくらいかかるのでしょうか??

さらに余談:ライゾマティクスなどのテクノロジー・アート創造企業はアートが収益を出すように先端的な活動を行っていますが(宮津大輔著『アート×テクノロジーの時代―社会を変革するクリエイティブ・ビジネス』参照)、アーティスト、というか芸術家と経済の結びつきは(一部の芸術家のことを除いて)イメージしにくいものです(パトロンをイメージするからか?)。たとえば社会学者の北田暁大さんが著書『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』の中で「アートはどうしても『経済』『労働』『搾取』といった問題系から目を背けてしまい、その時々の状況の関数で投下される公的資金助成金に依存してしまう」と述べていますが、アートに限らず、今の時代の「経済」「労働」「搾取」について考えることは必要なんだろうなと思いま・・・脱線しました。

備忘録:防災/減災の学びと避難行動

10月は大学生を対象とした震災学習を1件実施しました。スライド学習と商店主の方の震災体験談を含むまち歩きを通して阪神・淡路大震災について学んでいただきました。それにしても大学で防災や減災を学ぶ学生さん、あるいは被災地でボランティア活動をする学生さんが年々増えていっているという印象です。

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最近、近所の本屋さんに行くと『人はなぜ逃げおくれるのか―災害の心理学』(広瀬弘忠著、2004年)と『人が死なない防災』(片田敏孝著、2012年)が平積みされていて、7月から豪雨、台風、地震が続き、人々の災害に対する意識が高まっているのを狙ってのことだと思います。

14年前(!)に刊行された前者では、警報が発令された際、過度な恐怖や不安に陥らないようにリスクを過小評価する人々の心の機能である「正常性バイアス」が題名の「人はなぜ逃げおくれるのか」に対する答えとして提示されています。正常性バイアスにとらわれている限り人は逃げ遅れてしまうわけですが、では、どうすれば人は災害時に素早く逃げるのか?後者では、三重県尾鷲市で取り組んでいる「逃げるひと」をつくるプロジェクトが紹介されていて、そのプロジェクトでは、住民に東海・東南海・南海連動型地震で発生する津波が尾鷲にやって来るシミュレーション(「尾鷲市動く津波ハザードマップ」)を見せます。そして、津波の遡上に対して避難行動の開始時間が遅いか早いかによって犠牲者数が3,200人から0人に変わることを示します。そうすると住民の意識は「よし、地震が起こったらただちに逃げるぞ」となるのだそうです。

また、東日本大震災の前年に初版が刊行され、今年増補版が出た『津波災害―減災社会を築く』(河田惠昭著、2018年)では、高知県黒潮町における津波に対する住民意識の変化が紹介されています。その変化は町内に津波避難タワーが増えていくことがきっかけとなっており、タワーが増えていくことが「津波が確実に来る」「逃げなければ、命をなくす」という意識を起こしたようです。

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実際の避難行動に結びつく他人事から自分事への意識の変化は、マップやタワーなど何らかの人工物が仲介する学びによって生じているのが興味深く、ふたば学舎の震災学習の参考になります。(やまずみ)

雑記:映画で都市と人の生活について考える

先日、元町映画館で『ジェイン・ジェイコブズ ―ニューヨーク都市計画革命―』を観ました。

主人公は著書『アメリカ大都市の死と生』で著名なジャーナリストのジェイン・ジェイコブズで、とりわけ1960・70年代のニューヨークでの強引な都市計画に対するジェイコブズを中心とした市民の反対運動が描かれます。敵対するのはパワーブローカーのロバート・モーゼスです。映画での対立の図式はわかりやすくて、合理的で予測可能な(ああすればこうなる式の)トップダウン型の都市設計のモーゼス vs 予測不可能で雑多な都市を擁護するジェイコブズ。前者の都市には生活する人々の動きは見られませんが、後者では様々な人々の喧騒がボトムアップに都市を形成していきます。ジェイコブズの都市観察は、2002年にクリエイティブ・クラスの台頭を論じたリチャード・フロリダによれば、異なる職業・年齢・エスニシティ・思想などが相互交流することによって生ずる創造性と多様性を賞揚するものです。それだからか、映画の中の二項対立については、一見するとジェイコブズの側につきたくなったのですが、地震の多い日本ではモーゼスとは別種の上意下達式都市設計が必要なのかもしれず、そのあたりの塩梅がよくわかりません(養老孟司さんと隈研吾さんの対談本『日本人はどう住まうべきか?』に建築学会では津波に関してまったく研究されてないだとか、建築の人も土木の人も液状化はノーマークだとか述べられていたことを思い出したもので)。それでも場の創造と人の活動、そしてそこから自然発生的に形成される乱雑な秩序について考えるのに良い映画でした。(やまずみ)

震災学習での避難所体験と実際の避難所開設

9月は震災学習を3件行いました。

対象はいずれも市外の中学校で、19日(水)が岐阜県各務原市立川島中学校3年生107名、20日(木)が各務原市中央中学校3年生257名、27日(木)が福岡県明光学園中学校3年生52名でした。

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時間の長さと内容は異なりましたが、3件とも段ボールを使った避難スペース作りに挑戦してもらいました。家族に見立てたグループに分かれ、避難生活ができるスペースを作った後、阪神・淡路大震災のような巨大災害で避難生活が続くとどんな問題が起こるだろうか考え答えてもらいました。積極的に挙手して答えてくれたり、思いついたけど答えるのをためらったり色々ありましたが、なぜか避難生活の中で最初に起こり得る、トイレが水洗できず詰まって使えなくなるという問題を挙げる生徒はいませんでした(避難生活での問題をあくまで自分たちが作った避難空間の中で起こる問題と捉えてしまうからか?とはいえ、震災学習の実施側としては、生徒のみなさんに避難生活における身体的な不快さについて想像してもらうのは意外と難しいと感じています)。

そして30日(日)は、台風24号が神戸に接近し、台風21号に引き続きふたば学舎は緊急避難所となりました。台風21号の時は近隣住民40名が避難されましたが、今回は16名でした。高齢の方がほとんどで、多くの方が早めに当館に自主避難で来られていました。22時30分頃に避難勧告が解除され、みなさん無事に帰宅されました。緊急避難ですから、台風が通過するまでの短期間(6~10時間)ですが、もし大規模災害で長期の避難生活になると体調を崩してしまう人が出るのではないかと不安になります。

余談:床に雑魚寝型の避難所の様子というのは(段ボールベッドの導入など改善策が練られ出しているとはいえ)阪神・淡路大震災の時から今までほとんど変わりませんが、「日本の避難所のレベルの低さ」についてはアルピニスト野口健さん著『震災が起きた後で死なないために』(PHP新書)が参考になります。熊本地震の際に野口さんが避難所で取り組まれたテント村のことや人道援助の最低基準である「スフィア基準」のことなどが紹介されています。(やまずみ)

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震災学習と夏祭りの実施

8月22日(水)に島根県の松江総合医療専門学校看護学科63名を対象とした2時間の震災学習を行いました。

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スライド学習、避難所体験、紙食器作り、災害現場の知恵学習という内容でした。あらかじめ学校で災害および災害看護について事前学習されていたこともあり、生徒のみなさんは自分事として震災に関する話を聞き、避難スペース作りなどの活動をされていました。山陰にはひずみ集中帯があり、地震が起こりやすくなっているという指摘もありますから(とはいえ日本ではいつどこで地震が起こるかわかりませんが)、今回の震災学習が未来の震災に備えるための学びになっていればと思います。

それから8月25日(土)に3回目となる夏祭りを実施しました。

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講堂で工作ワークショップ、1階多目的室でお化け屋敷、夜に再び講堂で『東海道四谷怪談』の上映会という内容で、延べ254名の地域のみなさんにご参加いただきました。夏祭りを含めたふたば学舎主催のお祭りの大きな目的は「顔見知り社会」を作るということなのですが、「顔見知り社会」の形成が、ひいては災害時の共助につながるものと考えております。ちょっとでも知っていれば手を差し伸べる気持ちもわきやすくなるだろうと・・・つまり、防災活動の一環としてお祭りを行っているわけです。(やまずみ)

 

駒ケ林小学校で震災語り部体験談

本日、神戸市立駒ケ林小学校で毎年行われている鳥取県船岡小学校との5年生同士の交流学習「船岡フレンドシップ交流」で、地元の語り部さん6名による震災語り部体験談を実施しました(交流学習が始まったきっかけは戦時中の船岡への学童疎開阪神・淡路大震災時の船岡町からの支援ということです)。両学校の5年生85名が6グループに分かれて、それぞれ語り部さんの震災体験を聞きました。つい先日(6/18)に大阪北部地震が起こり長田区でも震度4の揺れがありましたので、語り部のみなさんもそれについて言及してから最大震度7阪神・淡路大震災に関する体験と教訓を子ども達に伝えられていました。

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語り部体験談の後は、5年生全員がアリーナに集まって、3問ほど防災クイズにチャレンジしました。最後の発表タイムでは、船岡小の児童から「駒小の人と交流して震災のことが知れてよかったです」という感想がありました。地震はいつどこで起こるか/遭遇するかわかりませんから、今回の震災学習を通して災害時の望ましい行動の知識が少しでも身についていればいいなと思います。(やまずみ)

 

震災学習の実施、お礼の手紙

本日、岐阜県羽島市竹鼻中学校3年生192名対象に2時間の震災学習を実施しました。プログラム内容は阪神・淡路大震災に関するスライド学習と避難所体験、災害時の知恵学習でした。避難所体験では人数が多かったため、避難スペースに使う段ボールが足りないグループもありましたが、実際の避難所の窮屈さに近い感じになりました。そして、避難生活の中で起こり得る困ったことを考えて発表してもらい、避難所では多様な問題が生じることを認識してもらいました。その後、元神戸市消防署員の野村勝さんに、災害時の知恵学習として、ロープ結束(本結び)と救急搬送法をご教授いただきました。今回学んだことが生徒のみなさんの防災意識向上につながればと思います。

↓本結びを習得中。

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それから、5月11日に震災学習を受けていただいた岡山市立妹尾中学校2年生98名のみなさんからお礼の手紙が届けられました。

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それぞれの感想を知ることができて大変ありがたいです。今後の参考にさせていただき、震災学習の内容をよりよいものにしていきたいと思います。ありがとうございました。(山住)